はじめに|もし日本がビットコインを“国家備蓄”したら?
「ビットコインって金の代わりになるかも」──そんな話を聞いても、正直どこか他人事だった。
でも最近、アメリカの一部の州がビットコインを“州の準備金”として保有し始めている。
実際、ニューハンプシャー州やアリゾナ州では、すでに法案が可決されていて、
テキサス州でも下院を通過し、上院で審議が進んでいる最中だ。
国家が通貨の信頼を守るために「金」を備蓄するのは有名だけど、
その枠に「ビットコイン」が入り込んできてるというわけ。
…じゃあ、もし日本がビットコインを備蓄したら?
ちょっと現実離れしてるように思えるかもしれないけど、 仮に10兆円分(=日本の金備蓄に相当)をBTCで持ったらどうなるのか、 価格や経済への影響をざっくりシミュレーションしてみようと思う。
昔の僕みたいに「仮想通貨ってギャンブルでしょ?」って思ってる人でも、
この記事を読み終える頃には「備える」ってこういう意味かも…って
ちょっとだけ視点が変わるかもしれない。
第1章|日本政府はなぜ金(ゴールド)を備蓄してきたのか?
まず、なぜ「金(ゴールド)」が国家備蓄として使われてきたのかを整理してみよう。
結論から言えば、金は“信用の裏付け”としての役割を果たしてきた。
たとえば日本政府や日銀が何かの危機に直面したとき、
「この国には金がある」という事実が、通貨の信頼や為替の安定につながる。
実際、日本はどれくらい金を持っている?
国名 | 金保有量(トン) | 備考 |
---|---|---|
アメリカ | 8,133.00 | 世界一の金保有国 |
ドイツ | 3,352.00 | ユーロ圏最大の保有国 |
イタリア | 2,452.00 | 財政不安の中でも金を維持 |
フランス | 2,437.00 | EU圏での備蓄安定化に貢献 |
日本 | 845.97 | G7中では比較的少なめ |
2025年時点での日本の金保有量は、約845.97トン(IMFデータより)。
世界的に見るとアメリカ(約8,133トン)・ドイツ(約3,352トン)・イタリア(約2,452トン)・フランス(約2,437トン)などが上位で、
日本はG7の中ではやや少なめ。保有総額は金価格1グラム=12,000円換算で、おおよそ10兆円近くにのぼる。
この金は、日銀のバランスシートにも計上されていて、
「通貨の裏付け」や「対外純資産」としての機能もあるんだ。
実際、金とビットコインを“国家備蓄資産”として比較するとどうなのか?
▶ 【比較】ゴールド vs ビットコイン|国家備蓄としてどちらが有利?初心者でもわかるメリット・リスクの違いを解説
ゴールド備蓄の目的は?
- 有事の備え(戦争・金融危機など)
- 為替介入時の信頼維持
- インフレに対する保険
つまり、「万が一のときにも国の価値がゼロにならないように」
金という“信用の最終手段”を持ってるわけだ。
そしてここからが本題──
この“ゴールドの役割”を、ビットコインが担えるとしたら?
第2章|ビットコインを国家備蓄する国や州の最新事例
最近では、「金の代わりにビットコインを持つ」という考えが一部の国や州で現実になってきている。
とくにアメリカでは、連邦政府レベルではまだ様子見が続く中、
“州レベル”でビットコインを準備金として扱う動きが加速している。
ニューハンプシャー州(2025年5月可決)
- BTCを州財務に最大5%まで組み入れることを認める法案を可決
- 目的は「分散化」「インフレ耐性の強化」「デジタル資産への備え」
アリゾナ州(2025年5月可決)
- 州が保有する“未請求資産”をビットコインなどで再投資可能に
- 財政資産の価値保存・成長を狙った制度
テキサス州(2025年下院可決・上院審議中)
- 州の準備金の一部にビットコインを含める法案
- エネルギー政策とマイニングの親和性もあり、保有に現実味あり
これらの州の特徴は、「実際に資産として保有することを明文化している」こと。
金やドルに代わる“新しい備蓄資産”として、
ビットコインが選択肢に加わってきているのがポイントだ。
さらに、国家レベルではエルサルバドルが最も有名な例だね。
エルサルバドル(2021年〜)
- BTCを法定通貨に採用した世界初の国
- 国家としてビットコインを定期購入し、備蓄を続けている
- 「毎日1BTC買う」方針を2023年から継続中
つまり、ビットコインは“個人投資家の資産”にとどまらず、
国家や行政が“備蓄する資産”として見はじめている段階なんだ。
このような各国・州の動きは「戦略的ビットコイン準備金」という考え方に基づいています
▶ アメリカがビットコインを“国家備蓄”にする理由|戦略的ビットコイン準備金とは?他国の動きも解説
第3章|シミュレーション①:日本が金と同額のBTCを備蓄したら?
さて、ここからは本題。
仮に日本が「金の代わりにビットコインを備蓄しよう」と考えたとして、
それを金保有額と同等の10兆円分で実行したらどうなるのか?
実際に数字でざっくり見てみよう。
前提:1BTC=1,500万円で計算
- 日本が備蓄する金:10兆円分
- BTC換算:10兆円 ÷ 1,500万円 ≒ 約6.67万BTC
世界との比較(2025年時点)
- マイクロストラテジー:20万BTC以上保有
- エルサルバドル:平均取得単価は高くないが、数千BTC規模
- 日本(仮想)で6.6万BTC保有なら、国家単位では世界トップクラス
価格への影響は?
もちろん、日本政府がいきなり6.6万BTCを一括購入したら、
そのニュースだけで価格が跳ね上がる可能性は高い。
- 「国家が買った」というインパクトで買いが殺到
- ETFや民間マネーが一気に流入する連鎖も起きうる
- 数週間〜数ヶ月で2〜3割の価格上昇要因になるかも
ただしこれは「表立って買った場合」の話。
実際には、分割購入・秘密裏の保有などが現実的。
なので、市場インパクトを避けて買うには段階的な取得が必要。
段階的に購入した場合のシナリオ
たとえば1年間かけて、毎月5,500BTC(約8,000億円分)ずつ購入するプランだったとしよう。
この場合:
- 急激な買い圧を避けつつ、市場の警戒を抑えられる
- BTCの価格変動リスクを“時間分散”で吸収できる
- 徐々に備蓄量が増えていくことで、市場にも織り込まれていく
一方で、価格が上がると予定の量を確保できなくなる懸念もある。
そのため、長期的な積立だけでなく、“押し目”を狙った柔軟な戦略が必要になる。
実際、エルサルバドルが「毎日1BTC買う」というシンプルな手法を続けているのも、
こうした“分散+継続”の考え方に基づいているのかもしれない。
備蓄として成立するのか?
- 金と同様、外貨準備や危機時の価値保存に活用可能
- 輸送・保管コストは金より圧倒的に小さい
- ただしボラティリティと規制未整備の課題は残る
こうして見ていくと、日本がBTCを金の代わりに持つのは、
「やろうと思えば全然可能」なレベルなんだ。
第4章|シミュレーション②:国民1人あたりにBTCを“配る”としたら?
ではここで、もう少し突き抜けた仮定をしてみよう。
「日本政府がビットコインを買って備蓄する」のではなく、
「国民に1人あたり一定額のビットコインを配る」としたらどうなるか?
前提:日本の総人口と配布量を設定
- 日本の人口:約1億2,000万人(2025年時点)
- 仮に1人あたり0.001BTCを配布すると → 合計1.2万BTCが必要
- 1BTC=1,500万円とすれば、0.001BTC=15,000円相当
- 総額:約1,800億円の財政支出
想定されるメリット
- ビットコインの“認知拡大”と“利用体験”の促進
- 国民がデジタル資産を保有・管理するスキル向上
- マイナンバーやウォレットと連携すれば分配の透明性確保も可能
現実的な課題・リスク
- 保管方法の問題(セルフゴックスの危険)
- 税務処理や会計処理の煩雑さ(取得時点の価格管理など)
- 貰った瞬間に売却する層も一定数いる(長期保有にはなりづらい)
- 仮想通貨を扱えない高齢層やデジタル弱者への配慮
実現可能性は?
- 財政規模としては不可能ではない(定額給付金より安い)
- ただし社会的インフラ整備(ウォレット・教育・サポート体制)が前提条件
- 国民全員がBTC保有者になることで、社会の価値観が大きく変化する可能性も
このケースはかなり極端な仮定だけど、
“政府と国民が一体となってBTCを保有する”という思想においては、
一つの方向性として想像してみる価値がある。
第5章|日本がBTCを備蓄するメリットとリスク
これまでのシミュレーションで、「日本がビットコインを国家レベルで保有する」ことは、
決して夢物語ではないことが見えてきた。
でも実際にそれを政策として採用するとなれば、
メリットだけでなくリスクも冷静に見ておく必要がある。
ここでは、国家視点での主なメリットとリスクを整理してみよう。
メリット①:インフレ・円安への備えになる
日本円の信用が下がったとき、外貨や金と同様に、
ビットコインが“価値の逃げ先”になる可能性がある。
特に少子高齢化・財政赤字・人口減少という
長期的な円の構造リスクに対して、
通貨以外の“価値保存資産”を持っておくのは合理的。
メリット②:デジタル金融の基盤資産になりうる
ビットコインをベースにした金融商品(ETF、トークン証券など)が増える中で、
国家がBTCを保有することで、国内のデジタル資産市場の信頼性が高まる。
新しい金融インフラの“核”として活用できれば、
民間投資の促進・イノベーションにもつながる。
メリット③:国際的ポジションの強化
米ドル依存の備蓄構造からの脱却(通貨分散)や、
新興国との経済連携(BTC決済圏)への布石にもなる。
デジタル金融・通貨の潮流に“乗り遅れない”という意味でも、
国家としてのBTC保有は戦略的に重要。
では逆に、どんなリスクがあるのか?
リスク①:価格変動リスク(ボラティリティ)
ビットコインはまだ“価格が安定していない資産”。
国家備蓄としては異例なほどの値動きで、
短期間に数十%動くことも珍しくない。
こうした変動に耐えられる財政・政策設計が求められる。
リスク②:規制整備の遅れ
日本は仮想通貨の規制が比較的厳しく、税制も不透明。
国家レベルで保有するには、
金融庁・財務省・日銀の法制度整備と方針統一が必要になる。
リスク③:国際的な批判・対立リスク
ビットコインは未だに一部の国から
「マネロンリスク」「環境負荷」「規制回避」として批判されている。
国家として保有を宣言することで、
国際的なイメージや外交戦略に影響する可能性も。
このように、BTC備蓄=リスクが大きい挑戦ではある。
ただし、それを正しく理解し、制度や運用を整えながら導入すれば、
中長期的には「国家の選択肢を増やす」ことにつながる。
第6章|僕の考察|“もし備蓄するなら”現実的な戦略とは?
正直、僕自身は「今すぐ日本がビットコインを備蓄すべきだ!」とまでは思ってない。
でも、「将来そういう選択肢が現実になるかも」とは本気で感じてる。
だからこそ、もし本当にBTCを国家備蓄に組み込むとしたら、どんな戦略が“現実的”なのか、自分なりに考えてみた。
ステップ①:金との“ハイブリッド備蓄”にする
いきなり「金をやめて全部BTC!」じゃなくて、
- 備蓄の10〜20%をBTCにする
- 金・外貨・BTCの“トリプル分散”で備える
このくらいの段階からスタートするのが、リスク管理としても現実的だと思う。
ステップ②:備蓄先を分ける(内外・オンチェーン)
国家がBTCを持つ場合、保管先も慎重に設計する必要がある。
- 海外分(外貨準備の一部)をBTC化
- 国内分(有事備蓄)はハードウォレット or コールドストレージ
さらにオンチェーン管理(アドレス公開)で透明性を保つことも重要。
ステップ③:保有だけじゃなく“使い道”も明確にする
「持ってるだけ」じゃなく、
- 将来の税収減を補う“資産収益源”として活用
- 災害時などの非常時財源としての位置づけ
- 国際協力・援助にBTC建てでの拠出を選べるように
など、政策とリンクさせた運用設計が求められる。
国家がBTCを保有することで、ただの“資産”じゃなく
「未来の選択肢を広げる武器」になる可能性があると思ってる。
国家レベルでも、個人でも“備蓄”するなら安全な保管が最優先。
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僕自身も、BTCの備蓄は毎日積立+ハードウェアウォレット保管が基本。
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まとめ|ビットコインは“国家の備え”になり得るのか?
ここまで読んでくれたあなたには、
- なぜ金が国家備蓄として使われてきたのか
- 実際にビットコインを備蓄し始めた国や州の事例
- 日本がもしBTCを保有したら…というシミュレーション
- メリット・リスク・現実的な戦略案
このあたりの全体像が、なんとなくでも掴めたんじゃないかと思う。
結論として僕は、
ビットコインは、“金の代替”になるかどうかじゃなく、
「金と並んで持つべき資産」に育ちつつある
という立場。
現時点で日本がすぐにBTCを備蓄するとは思えないけど、
インフレ・財政不安・円安…といった構造的なリスクが積み重なる今だからこそ、
「新しい備え方」を少しずつでも検討していくことは、大事な視点だと思ってる。
国家も、個人も、どちらにとっても同じで、
未来が読めないからこそ“選択肢”を持っておくことが、生き残る鍵になる。
ビットコインはその一つかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
でも、今のうちから考え始めておくのは、きっと無駄じゃないはずだ。
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